この前の日曜日には、空手の体験に行ってきました。
親子連れでにぎわう良い道場でしたよ。この前の合気道の所より練習日を自由に選べそうなので、考えた結果空手を来月から始めることにしました☆ 護身術としても、これから役に立つのかなと思ってみたり、どこまで強くなれるのか試してみたくなったりとこれから楽しみです!
「透明なる道しるべ」
ーー私の名前を。私の名前を探してください。
「なんだって? も、もう一度言ってくれ」
言われた意味がよくわからなくて僕は、手にしているそれにもう一度話しかけた。それは、僕の声を理解したかのように光を瞬かせてもう一度繰り返した。
――私がなくしてしまった名前を探してほしいのです。
そう、手にした水晶は答えた。
――私にはかつて人が与えた名前がありました。そう、この姿ではなく「私」という存在に、ある人が想いをこめてつけてくれた名前……。私はその名前が好きでした。その相手が私をそう呼んでくれる度に私はここにいる。私はここに居ていいと思えるようになり、その名前が私にとってそれまでには手にすることのできなかった幸福を与えてくれたのです。しかし、長すぎる眠りの中で、私は私の「名前」と、私に名前を付けてくれた人のことも忘れてしまいました。私は、忘れたくなかった。
「……でも、どうやって探せばいいのやら……。思い当たる所とかはあるのか? それと、これも試練なのかい?」
試練。
水晶に問いかけながら僕の中にはそんな思いがあった。そもそもこの水晶の洞窟に来たのも、村恒例の儀式の一環だった。夏祭りの夜、水晶細工で有名なこの村では10歳を迎えた子供は、細工作りの原料となる水晶の採掘を許されるようになる。水晶が群生している洞窟に入り、自力で水晶を見つけて取ってくるのが、清水(きよみず)の儀式だった。
僕は最後に挑戦する子供だった。でも、出てくる他の子を見た感じ、こんなことがあったなんて一言も聞いていない。しゃべる水晶なんかに出会えば、いくら水晶の位置とかは禁句でも話くらいには聞くはずである。
ーー試練? なんですか、それは?
「んー。清水の儀式って言って、子供が洞窟に水晶を取りに行くってやつなんだけど…。知らないならやっぱ違うんだろうな。それで。具体的にはどうしたらいいんだ? 名前を探すんだ。どっかに刻まれているとかそうゆうことはないのか?」
手の中でその水晶をくるくるとまわしてみる。そもそも一見するとただの磨かれていない水晶。おかしいところなんかあるはずもなかった。
ーー私を外に連れて行ってください。そうすれば、そうすればきっと思い出せる気がするんです。
「外に……。ねぇ」
ちょっと気が進まなかった。
なぜならこの洞窟から持って行ける水晶はひとつだけ。その水晶が、言葉を話すは、会話をする場合にはぴかぴか光るは、ではとても両親や友達に見せることはできない。
でもーー。
「わかったよ。外につれてく」
ーー! ありがとう!
このままほって帰ったら余計後悔しそうだった。その予感がどうしてなのかはよくわからない。名前をなくした水晶に同情したのかもしれないし、特別な水晶を持っていたいという欲望かもしれない。
ただ、僕は自分の不安を押し隠して、この水晶を持っていくことを決めた。
でも、この水晶ってさすがに加工はできないよね……。
一番の不安の種が頭に浮かびながらも、僕はカンテラと水晶を手に洞窟の入口へと戻って行った。
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