また前の続きです。
「天に届け銀の柱-3-」
軽く言うカナの様子を、呆気に取られてヒラは見つめた。それほどに、突飛なことだったのだ。
「何を言っているんだ、カナ。それは・・・禁忌とされている術じゃないか! 時間停止は、政府が特定の重要文化財など保護を急遽として必要としているもの以外に使用することを禁止している! それに、生物の時間を止めるということがどれだけの罪になるのか、カナは分かっているのか!」
「そんなに大きな声を出すなよ」
言われてヒラははっと口を閉ざした。場所は人がいない野外だが、どこで誰が聴いているとも知れない。魔術師は自分が操ることの出来る力の大きさから、力の自制を強く求められる。逆に如何わしい行動をしていればそれが実害があった無いに関わらず、過去にあったような魔女狩りの対象とされることが現在でもある。
「どうゆうつもりだ」
声を低くして問いかけた。
「重罪だって言うことはわかっている。本当にやってはいけないということも。でも、でも、僕らの時間や、僕らの命を守るにはこれしかないって時もあるだろう。僕は死にたくないし、みんなも死なせたくない。その方法があるんだってなら、実行してもいいじゃないか」
「時間が止まるってことは、死んだも同然なんだぞ」
「でも死んではいない。少し冬眠するのと同じだ」
「カナは、人がその時間の中で生きる権利も奪おうとしている。どんな結果が待っているとしても、人は逃げちゃいけないんだ」
苦しそうに言ったヒラの表情を、カナは静かに見ていた。理解をしてはいるのだ。カナは、ヒラの言っていることが正しいと分かっている。ただ、それに感情がついていかない。
「守ると、言葉を変えてもそれは許されないことなのかな・・・」
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