なんとなく浮かんだネタです。続きません。そして、短い。
――望まない未来が来ることに恐れはないのですか?
「んなこと考えた事ねえよ」
あくびをかみ殺して答えた。いったい何度目だって言うんだろう。何かあるごとにこいつはそれを聞いてくる。
――何故、このような選択をするのですか?
「嫌だったらこんなことする訳ねえだろ」
雨粒が上から下へと降り注いでくる。おかげで髪はびしょぬれ、それどころか服だってびしょぬれだ。早く乾かさないとこりゃ風邪ひくな。
――ただ道に迷っただけのように思えます。
「うるさい! だったら、少しはどっち言ったらいいかとかアドバイスくれよっ! それくらいだったらできるだろ」
――神は人に試練を与えます。神のしもべたる私は、神が与えた試練を妨げることはできません。
「ああ、そうかよっ! わかったよ! わかったから少しは黙っててくれ!!」
茂みをなんとか抜けるとそこには道があった。アスファルトで真っ黒に固められた道。それでも道が見えたことに、俺は心底ほっとした。
神様が世界によこしたという精霊とやらが、俺の所に来たのはほんの数日前だった。そういや、こんな雨の日だったと思う。大学が長期休暇にようやく入ったので、俺は久しぶりに奈良県の田舎に帰ろうとしていた。
東京と違って、顔をあげると山が見える風景はどことなく俺を落ち着かせる。小さい頃から眺めていた風景だからかもしれない。大阪と奈良の県境にある生駒山が俺は好きだった。
――それを早く見たかったのに……。
京都から西大寺に出ている特急が車両故障で止まったのは、そんな俺が乗った時だった。
周りは田んぼ一面。よりによってなんでこんな所で起きたんだ?
慌てて立ち上がる乗客に、ため息つく乗客。そして、車両内の放送。
俺はため息をついた方だった。カバンから片手に携帯電話を取り出して、家族に電話をするか、メールをするかを悩んだ。
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