:続きで、繋がってはいるけれど・・・:
アレスと呼ばれた少女は自分の短い髪をがしがしと乱雑にかき混ぜると顔を上げた。
「つまりは、見に行けばいいんじゃないか。そんなに考えているならさ」
アレスの一言に、サティは頷いた。ただ残った一人、グローテルだけは簡単に頷かなかった。
「決まりですね」
「でも、本当に密猟者でしたらどうします? 銃を携帯しているかもしれません」
探るようにグローテルは二人を見た。アレスはおどけた様に肩をすくめると、笑ってグローテルに視線を返した。
「怖いのか? 怖かったら降りてもいいんだぜ」
「そうではありません。考えておくならば幾らかの可能性を想定しておくべきです。確かに、法律で銃刀の所持は禁止されていますが、相手が持っていないという理由にはなりません。命の危険があるのですよ」
そこまで言ってグローテルは言葉を切った。いつになく厳しいグローテルの表情に他の二人も同様に沈黙をし、俯きがちに思案をした。先に言葉を発したのはサティの方だった。サティはアレス同様髪の短い少女である。だが、アレスと違い髪の色は薄茶で、その瞳も同様に色素の薄い茶色の目をしている。その瞳が強い決意の色を宿していた。
「怖くないわけではないのですが、それでも私は行きたいと思います。危険なことはもちろん避けます。私たちは命知らずな冒険者ではなく、一介の市民なのですから。ただ、今回は気になることがあったから、という趣旨での様子見でしょう。もし実際に違法なことが行われているならば、小さなものでも証拠を手に入れればいいのです。その後は警察に任せればいいではないですか」
その意見にグローテルも頷いた。続けてにっこりと笑うと、アレスに視線を投げた。
「そうゆうことですよ、アレス。くれぐれも無謀なことはなさらないで下さいね」
「それ、どうゆう意味だよ。どうしてあたしにだけ向かって言うんだっ!」
そのケンカにそのまま走っていきそうな空気を、慌てて仲介するようにサティがアレスを抑えた。
「まあまあ。落ち着いて、アレスちゃん。グローテルも悪気があるわけじゃないのよ。危険があるということの確認、それでも行く勇気があるのかどうか。それを聞いたんでしょう」
グローテルは頷いた。その様子に、アレスも内心の苛立ちを隠しながらも席に座りなおした。その様子をほっとして眺めているのはサティである。
「それでは、最後に確認します。出発時刻は明後日の放課後。授業は午前中に終わりますから、その後すぐに目的の場所に向かって出発したいと思います。準備は各々、必要と思うものを持ってくること。いいですか?」
グローテルの言葉に二人は頷いた。
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