性懲りも無くオリジナルを書こうと四苦八苦。
放課後になった教室の一角で、窓際の机に腰をかけ、窓から海に沈み行く夕日を眺めている少女がいた。くせのある長い栗毛を後ろで一まとめにしたポニーテールは静かに波打っている。色白の肌は夕日の赤に綺麗に染まっていた。少女はその姿勢を微動せずに、沈み行く太陽を眺めていた。
空には小さな積乱雲が、西から東へとゆったりと風に流れていた。きらきらと光る海面の近くには海鳥が群れをなして飛んでいる。窓を空ければ潮風と共に、海鳥の歓声が聞こえることだろう。太陽がその体を美しい半円に変えるころには、上空はうっすらと紺色に染まり、月が姿を現しかけていた。電灯をつけていない教室はすっかり薄暗くなり、そのころになって少女はようやく席を立った。
「また外を眺めていますね。グローテル、何を見ているのですか」
少女はその声の主を認めて驚いた。教室の入り口の入り口には黒のトレンチコートに身を包んだ青年が立っていた。グローテルと呼ばれた少女は、急いで壁にかけたコートを羽織ると、机に置いた革のカバンを手にして、その青年の傍へと駆け寄った。その表情は思いがけない出来事に喜んでいた。
その様子を柔らかい表情で青年は見ていた。
「お兄様、迎えに来てくださったのですか?」
「あまりにも妹の帰りが遅いようなのでね。母上をあんまり心配させるんじゃないよ」
グローテルははっと目を見開くと、落胆した表情で兄――ロビンスを見つめ返した。
「申し訳ありません。ここだと落ち着いて考えられるので、つい時間が経つことを忘れてしまいました」
ロビンスは叱るように表情を厳しくしたが、それは一瞬だった。すぐに先ほどの人を安心させるような表情を浮かべると、ぽんぽんとグローテルの頭に軽く触れた。それは赤子をあやす様で、グローテルは顔を赤く染めると一歩後ろに下がった。
「やめて下さい。わたしはもう赤ん坊ではないのですよ」
「あはは。ごめんごめん。グローテルが可愛かったから、つい、ね。勉学に励むことも大切だけれど、あまり遅いと不安になるから他のお友達と一緒に帰ってきてほしいな。それとも、学校で何かあったのかい?」
「いいえ。サティも、アレスも、相変わらず仲良しです。昨日なんか夕方まで流行のお洋服について議論を交わしていました」
そこで一度言葉を区切ると、グローテルは迷うように視線を左右に動かした。
「今日は、その・・・考え事をしていたのです。歩きながら話してもいいですか?」
「もちろん喜んで」