:閑話その1:
「なんだか・・・大変なことになっちまったな」
「そうね・・・」
「その・・・家帰れるといいな」
「そうね・・・」
「母さんたち心配しているかな。お前の家も相当心配しているんじゃねえか」
「そうね・・・」
アレスはそれきり黙ってしまった。唯一話を聞いているグローテルがずっとこの調子では、話してもしょうがない。しばらく沈黙が続いた。
「なあ。グローテル」
「そうね・・・」
「おい、しっかりしろよ!」
二人の前にはブライアン達とサティが談笑をしながら、歩いていた。ここの地理に詳しいのは彼らだった。そう、サティも。グローテルはようやく顔を上げた。
「うるさいわね。ちょっと考え事をしていたのよ」
「へーへー、ちょっとですかい。さっきからずっとそうねそうねばっかじゃん。人の話聞いてんのか!?」
「・・・ごめんなさい」
「素直に謝るなんてらしくねえの。いつもだったら言い返してくるのにな。まだ、サティのこと気にしてんのか」
「それはまだ答えが出そうにないわ」
「気にしなくても良いと思うけどな。そんなに真剣になることじゃない」
「どうでもいいって言うの!?」
「違うよ。サティが言ったことを聞いてなかったのか」
「え?」
「森を見て木を見ない。今のグローテルにはぴったりの言葉のようだけれどな」
アレスは肩をすくめた。
「思ってもいないこと続きで疲れたんだろ。少しは肩の力を抜いたらどうだ」
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