:何故か急に劇中に。適当に話は繋がっています。飛んでいますが:
「君たちは知らないという。だが、これは我らの共通の見解だ。君たちの祖先が我らを見下し、差別をしてきた。土地を奪うことを当然とし、我らは獣人と罵られた。我らは君たちの祖先を率先して追い出すようなことはしなかったのに、君たちの祖先は何の理由も無く我らを殺し土地を奪おうとした。許されることではない」
口にされたのは、見識の異なりを責める言葉だった。グローテルは答えることが出来ず、苦しい胸中で下を俯いた。グローテルはその歴史を知ってはいた。しかし、どれほど相手側とこちら側に意識の違いがあることだろう。グローテルも、そこまでブライエン達、ルアの一族がセオドア郷国を嫌っているとは思いもよらなかったのだ。
グローテルの隣でアレスが何かを言おうとして、言葉にならず俯いた。アレスもグローテルと同じだった。何かを言い返したくても言葉にならない。相手の言葉はアレスにとっても的を射ったものであった。
「そうかもしれません」
その声に二人ははっと顔を上げた。アレスの隣で大人しくしていたサティが毅然と顔を上げていたのだ。ブライエン達も、その少女に視線を投げた。敵意のある鋭い視線だ。それをサティは真っ向から受け止めると、動じることなく口を開いた。
「確かに、アレスもグローテルもセオドア郷国の国民です。国の罪は、国民の罪でもあります。責任ある態度と行動は示していかなければならない。でもセオドアの国民という理由で、あなた方にとっては信じることができないと言うんですね。私としては、森を見て木を見ない、あなた方に少し失望しました」
グローテルは呆気にとられて、サティを見つめた。いつもの少し儚げな印象はどこかに吹き飛んでしまったように、サティは姿勢を毅然とし、この三人の中でも一番堂々としていた。不意にグローテルは不安に襲われた。見てはならないものを見てしまったような気がして、心臓がどくどくといやな音を立てている。
ブライエン達はサティの冷たい視線に少したじろいだ。
「あんたは何様のつもりだ。俺たちの苦しみをなんだと思っている。あんたらにとっちゃ終わった話かもしれないが、俺たちにとってはまだ終わらない。一族が苦しみの境地に立たされているんだぞ」
サティは悩むようにグローテルとアレスの二人を振り返った。二人とも不安そうな目でサティを眺めている。グローテルもサティの中の迷いが何なのかは理解できなかったが、サティが投げた視線はブライエン達の言葉に悩んだというよりも、グローテル達二人を気にするようなものであるような気がした。
サティはすぐにブライエン達に向き直った。そして、告げられた言葉はブライエン達にとって、そして、グローテル達にとっても衝撃的なものだった。
「私は、サティ・ラガムルード。でも本名はサテラス・二・ギムリッドです。あなた達ならわかるでしょう。私もグランビルの大地に故郷を持つものです。ドリアドールの末裔・ギムリッド。聞いたことがあるはずです」
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