:個人的な理由付け、及び解析だったりします。:
――雨は嫌いだ。じとじととする冷たさも、何があっても淡々と降り続けるところも、8年前のあの日を思い出させるから、嫌いだった。
「えー、とゆー訳で今日は水中に落とされたという・・・大きな宝石がついた首飾りを探しに行く事になった」
重大な宣告がウィルより言い渡されたのは、皮肉にもいつもよりも清々しい空の晴天の日だった。空はすがすがしいというのに、詳しく話を聞いていくうちに、背筋に冷や汗が落ちていくのをクロエは感じていた。場所は内陸海の中央付近。小船で近くに行って、素潜りで探すというやつらしい。この町に、泳ぎが得意なマリントルーパーがいるということを聞きつけ、緊急を要した様子で依頼者がやってきたのだ。
――湖・・・。水・・・。
それらを考えただけで、クロエは気が遠くなりそうだった。話そっちのけに、意識がそっちにばかり向いていた。だから、呼びかけられるまで周りの進行状況に気付かなかった。
「・・・ロエさん。クロエさん!」
「・・・わっ! ど、どうしたんだ、ジェイ」
顔を上げると、目の前にはジェイの顔があった。クロエが気付くと、呆れたように肩をすくめて、道を指した。
「どうしたもこうしたもないですよ。もう、皆さん歩き始めていますよ」
「そ、そうか」
たどたどしく返事をすると、クロエは気を取り直して歩き出した。その様子を、ジェイはじっと見た。クロエの浮かない様子は、ジェイの中にあるクロエのカナヅチという情報とすぐに直結していた。
――行きたくないなら、行かないと言えばいいのに。
ジェイから見ると、時々クロエの行動は、ジェイの理解を超えることがある。ジェイはいまいち、クロエの騎士道精神というものが理解できない。他人に弱みを見せたくないという意固地な気持ちとはまた別のものらしい。
――別にクロエさんが泳ぐわけでもないというのに。
泳ぐのは泳ぎが得意なセネルかシャーリィか。水中でも息が続くという意味ではシャーリィが適任だろう。少なくとも全く泳ぐことができないクロエに話が持って行かれることはない。それに、セネルはクロエの事情を知っている。フォローはしてくれるはずだ。おそらく。
ジェイはそこまで考えて、ゆっくりと歩き出した。
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