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2025/05/16(Fri)10:32
超趣味に走る雑記帳改め小屋的ブログです。 思いついた小ネタ、アニメ感想、ゲーム感想、その他もろもろをざーっと無節操に書くネタ帳兼日記でございます。
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2008/04/13(Sun)22:59
「はじめまして」
差し出された手。
「よろしくね。ノイ」
その意味が分からず見上げるとまっすぐな瞳が僕を見ていた。その時初めて握手を求められていることに気付いた。
「う、うむ。よろしくな」
ぎこちなくその手を握り返した。
クルックは料理をご馳走すると言って、厨房の中に消えていった。マルマロは、手伝いに行ったのかつまみ食いに行ったのか、とにかく姿は見えなかった。
ゆっくりする時間ができたとはいえ特にやりたいこともない。
久しぶりにゆっくり休めるのだからと、ソファに身を埋めたものの厨房に消えていった新しい影使いのことが気にかかった。
「どうしたんだ、ぼーーっとして」
思いにふけっている時に声をかけてくる奴は決まっている。振り返ると案の定シュウと、ついでにブーケもいた。
「別にぼーーっとなんかしていない。ただ…」
「ただ?」
オウム返しに尋ねてくる。どうやら何を考えていたかを詮索するほどの頭はないらしい。
僕は溜息をつくと、素直に自分の心情を言った。
「……予想と違っていた。お前達の仲間だというから次はどんな騒がしい奴かと思っていたのだが、……可愛いじゃないか」
「か、可愛いぃ?」
その言葉は意外だったらしい。シュウとブーケはびっくりしていたが、なぜかその後ブーケは怒ったように僕に詰め寄ってきた。
「ちょっと! それって私がまるで可愛くないって言ってるみたいじゃない!」
――そういえばブーケにはこの言葉を言ったことなかったな。
別にブーケが可愛くないとかそんなことは思っていない。ただ、初対面時の子供扱いを受けた屈辱と、何度言っても直してくれない呼び方が、自然とその言葉を言わせなかっただけだった。
いたずらっぽく笑うと、僕はかねてからの注文を返した。
「お前はちゃん付けで呼ぶのをやめたら考えてやる」
「むー」
シュウがあきれ果てて見守る微妙なにらみ合いの中、救いの声が厨房から飛んできた。
「みんなー。ご飯できたわよー!」
「はーい! ……ノイちゃーん。いつまでもそんなことばっか言っていると今度甘いもの作ってあげないわよ」
きっちりと決まり文句の脅しをかけてくる。それならこっちだって同じだった。
「呼び方を直す方が先だ!」
ふんぞり返って言い返すと、ぱんぱんとシュウが手をたたいた。
「はいはい…。俺は先に行くぞ。早くしねえとマルマロが全部食っちまうかもしれねえからな」
そう言ってシュウはさっさと台所に向かった。
「! それは困る!」
「ちょっと! 私を置いてかないでよ!」
慌てて僕とブーケもその後を追った。
――それに、初めてだった。子供扱いしないで僕を見てくれたのは。
一番印象に残ったのはまっすぐ見つめてくれている瞳だった。
>>>>>あとがき
初めてクルックにノイがあったらこんなんかなあと思って、クルック至上主義のもとについ小説を書いてしまいました……。
今月中にはクルック登場すると思っているんだけどなぁ…。早く出てこないか期待中。このSSには出ていないけれど、アンドロポフともどうなっているのか期待中。
No.89|ブルードラゴン|Comment(0)|Trackback()
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