:死後あたりですか:
――決めなきゃいけなかった。逃げないで、自分の目で見て、考えて。それが、未来を知ったあたしの責任だった。なのに、あたしの足はトーティスから離れていく。ユーグリッドからも離れていく。意識をした訳じゃなかったけど、二つの村…今じゃ町か。その二つの町はあたしの家から結構離れていたし、行くのは簡単じゃなかった。時間が経つと、ヴォルトがくれた力はなくなってほうきはそこまで飛ばなくなって、遠出が難しくなってきた。ああ、これって言い訳だ。行きたくないのってきっと、会いたい人がいなくなってしまったからだ。時間が経つのって思ったより早くって、ハーフエルフに比べて人間の寿命って本当に短くて…。ごめんなさい、やっぱりあたしは言い訳をしている。
「ここに来たのって久しぶりだなー。まだ何にも建っていないんだ。人もいない」
――別れが本当に寂しいって、気付いたよ。もしかしたら、会わない方がこれ以上の寂しさを知らないで生きていけるのかもしれない。新しい未来だけを考えて生きていける。未来も過去も思い出だけになれば、これ以上…辛い別れもなくなるはず。
『本当にそう思っているの?』
「誰?」
『あれ? 忘れちゃった?』
「……リア? リアなの」
『帰って来た時、すごく楽しかったって、100年後にも会いたい人がいるんだって話してくれたよね。会ったら連れてきて紹介してくれるんでしょ。約束したじゃない』
「そうだね。でも、怖くなっちゃって。らしくないかな」
『アーチェは優しいから。でも、忘れちゃ駄目だよ。待ってくれてる人達がいて、アーチェだって会いたいんだってこと。クレスさん達の幼馴染なんでしょう。その人』
「前に言ったかもしれないけれど名前はね…、チェスターって言うんだ。口が悪くて、性格も捻くれていて、旅の間はしょっちゅうケンカしたんだ。あれ? おかしいな。もうずいぶん時間経っちゃったのに、ちょっと前のことのように思い出せる……」
『もう行くね。今度はチェスターさんを連れてきてね。約束。アーチェは、きっと大丈夫だよ。そんなに会いたいんだからきっと大丈夫』
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