天界の七竜で、アンクルネタです。飢えているんだとおもいます。ええ、切実に何かに。
山村生活始まったばかりの時の話です。短い短いストーリーです。
「日向の下、清らかなる空気の下で」
は以下からどうぞ。
「日向の下、清らかなる空気の下で」
空気のいい所で療養するといいって言われたけど、道の舗装もろくになっていないこの土地で生活するのにはとても骨が折れた。生活を始めて少しわかったことがある。この土地は確かに空気も水の美しさも清らかさも申し分ない。普通に生活するならば、何も問題なく、むしろ心身ともに健やかに生活することができるだろう。
しかし、足が思うように動かない場合、人が享受する自然の恩恵のいくつかは重い足かせとなる。文字道理に。移動にも一つも二つも苦労があまりある。命が助かっただけでも喜ぶべきなのに、この状況を呪っている自分がいる。なにより、都市部の近代化された設備に慣れ切っていた自分がこの環境にまだ落ち着けなかった。
――定められた情報を得て、整理する。ここにはそんな情報はない。
一瞬そう考えたが、すぐに首を横に振って自分で否定した。情報がないわけではない。情報はある。ただそれが、この村を中心としたせまい範囲のみに限られてのものになっているだけだった。
生活環境の変化、戦闘時の負傷による後遺症。
――それに、とっさに誘ってしまったものの……。
横目で今日の昼食を着々と準備する彼女を見て、思わず頭を抱えたくなる。
ただの一時しのぎ。彼女を戦いに連れ出そうとするあいつの前から遠ざけたかっただけだった。それだけで一緒に来ないかって誘ったのに。
「よし、できた! ご飯できたわよ、アンドロポフ」
「あ、ああ。ありがとう」
彼女――クルックは、闇との戦後、病院で看護婦として働いていた。今彼女がここにいるのは、あの時に自分が一緒に来てくれるように誘ったからだ。でも、彼女がここにきてそれからどうするのかまでは知らない。
――ここに縛りつけたくはない。でもクルックはどう思っているんだろう。
彼女は自慢げに自らが作った料理を皿の上に並べていった。その中に、苦手な食材が混じっていることに気付いて、自分の思考が一時妨げられる。表情にも出ていたのだろう。彼女は俺の視線の先にある赤い野菜を見るとすべてを見通したようににっこりと笑った。
「食べ残したらだめよ。ちゃんと静養しないといけないんだからね」
「あ、ああ……」
食事が始まると、村のことや天気のこと、自然のことでクルックの話が始まる。俺もそれを聞きながら楽しんでいた。
――だめだ。話せる空気じゃない……。
あたまの隅にはいつかは言わないといけないと警鐘が鳴らされていた。でも、今は、クルックの素朴な笑顔を見ているととても言い出せそうになかった。
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